* * 前号(64号)のつづき * * |
2.バガヌールにおける試験舗装 |
マニュアルを作成するにあたり、道路の種別、交通量のどのあたりを対象とするか、モンゴルで入手できる材料はどのようなものがあるか、そして道路建設機械は何があるのか等を検討し、試験舗装を実施しました。
今回のJICA草の根技術支援は、ゲル地区生活改善事業の中に組み込まれたプロジェクトであるため、ゲル地区の失業者を作業員として採用することとなりました。
ゲル地区とは雪害(ゾド)で家畜を失い失業した人や、炭鉱や発電所の合理化に伴い失業した人達が、ウランバートルをはじめ都市の周りにゲル(伝統的居住用テント)を張り、住みついた地区を云いますが、道路、水道もなく不衛生な地域であり、あまり安全な所ではありません。
現在では、ゲルだけでなく建物とゲルの併用が多いようです。この失業者を援助するのも大きな目的であるため、機械施工と併せ、なるべく人力施工を採り上げることとしました。
ちょうど、日本の戦後、失業者が国中に溢れたころ、国策として失業対策事業として、舗装工事が行われたことを年配の方々はご存じでしょう。あのニコヨン(日当が240円であったことからこう呼ばれた)の再現です。 |
バガヌール・ゲル地区内での道路工事 |
ゲル地区内の道路とはいえ、道幅は広く、北海道の道路のようであります。モンゴルではマイナス30℃以下の低温になることから、当然路床土や路盤は凍結します。しかしながら、水分量が極端に少ないことから日本のように凍結することはありません。
モンゴルでは道路を構築する時に、必ず盛土を行います。これは、凍結融解の影響を回避する目的と、降雪時に舗装面を高くしておくと、道路として認識しやすいとの理由があるようです。 |
試験舗装では、どの程度の舗装構成が適正なのかをつかむため、三断面を実施しました。
道路用建設機械は、社会主義時代の古いロシア製から当社のローラをはじめ、最新の機械等多種雑多であります。一般に国営企業や地元大手舗装会社が保有している機械をレンタルして使用していますが、寒冷地域のため、施工できる期間が短いことから、取り合いとなるようです。 |
人力施工も取り入れた工事 |
@セメント安定処理 |
混合用機械(スタビライザ)はまだモンゴルにはありません。そこで、混合はモータグレーダのスカリファイアとブレードを活用しました。
当然混合は悪いため、セメント添加量の割増率を多くしました。たまさか風の少ないときに施工できましたが、風が強いときは縦溝を掘り、セメントを置くと同時に、骨材をすばやく上にのせる方法をとっています。 |
(つづく)
酒井重工業(株)監査役 小黒幸市 記 |